小説を読んで涙する
魔道士は平凡を望む4 66
グレンの回想。
「仕事ばかりの両親に愛情など期待しなかった。
だがその寂しさを埋めるようにはじめたのがガーデニングやネットゲームだ。無邪気に大人に懐く姿こそ自分の憧れだったのかもしれない。
外見だけではなく必要以上に無邪気に振舞う自分に何かを察したのか、ヴァルハラのみんなはよく構ってくれた。彼らの姿をともかく、本体は全員自分より倒し上だったのだろう。
頭を撫でてもらう、抱きしめる、落ち込めば慰める、叱る、褒める・・・幼い頃からほしかったものは全て彼らが補ってくれた。『友人』というより『保護者』に近かったのだと思う。実際、自分は別のギルドに所属していたのだし。
そして・・・『赤猫』と呼ばれすごした日々は間違いなく異世界に放り出された自分を支えてくれたのだ。空虚なままの自分では、きっと簡単に生を手放していた。」
幼馴染に支えられた、夫に支えられている。
甘えさせてくれて、慰めてくれて、叱ってくれて、褒めてくれる。
あぁ、助けられてきたんだな、助けられているんだな。